博物館では、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野で研究されていることを紹介する「博物館講座」を実施しております。
7月19日(土)の第2回博物館講座では、東北芸術工科大学から岡陽一郎(おかよういちろう)先生を講師にお招きし、「伊達○衡」の誕生と拡散-東北地方以外の事例から-」という演題でご講演いただきました。今回は22名の方が参加され、メモを取りながら熱心に耳を傾けていました。
岡先生は日本中世史がご専門で、近年では「近世における中世の由緒に関する研究」にも取り組んでおられ、これまでにも当館でたびたびご講演をいただいています。
今回は、「伊達〇衡」という表現についてお話しいただきました。この表現は、本来は誤ったものにもかかわらず、なぜ広く世間に認知されていったのか――その背景を、新しい視点から解き明かす研究成果をご紹介いただきました。
ご講演によれば、「伊達〇衡」という人名の表現は、幸若舞・浄瑠璃・歌舞伎といった芸能の中に登場します。当時の娯楽の中で、史実と創作の境界があいまいになっていき、その結果、「伊達氏=平泉藤原氏」という認識が一般に広まったのではないかと、考えられているそうです。
さらに、こうした芸能は上方(現在の近畿地方)が発祥であることから、「伊達〇衡」という呼び名は、東北地方ではなく、むしろ別の地域で生まれた可能性があるという見解も示されました。
講演後、参加者からは次のような感想が寄せられました。
「史料から読み解ける情報の深さに驚いた」「史実とフィクションが交錯しながら、奥州藤原氏のイメージが形成されていく過程を知ることができ、とてもスリリングだった」「実際には使われていなかった名前を、学者までもが使っていたことに驚き、当時の人々の価値観を知る貴重な機会になった」
史実と芸能の関わりを通じて、歴史がどのように人々の中で形作られてきたのかを学ぶ、非常に興味深い講演となりました。
次回は9月20日(土)、東北芸術工科大学の佐藤祐輔先生による第3回博物館講座「先史時代の石器づくり」を開催します。詳しくはホームページでお知らせしておりますので、ぜひご参加ください。

