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プライム企画展「東北の自然史大図鑑」開展

長く厳しい暑さもようやく和らいで、朝晩は肌寒いくらいの日が増えてきた山形ですが、皆さんがお住いの地域はいかがでしょうか。
博物館そばの桜並木の樹木は、連日の猛暑に耐えた疲れが出ているのか、もうすでにかなりの葉を落としています。猛暑による疲れや急な寒暖差は、樹木だけでなく人も不調になりがちですので、この時期体調に気をつけて過ごしたいですね。

自然豊かな霞城公園では、これから秋ならではの光景が様々見られるようになり、散策がより楽しい季節になります。その先陣を切るように、いつの間にか東大手門付近でヒガンバナが咲き始めていました。大変な暑さが続いた夏でしたが、季節の変わり目を察知して現れた鮮やかな赤い花を見ると、やっと暑さがおさまって秋が来るんだとホッと安心する思いです。

さて、博物館では、9月28日(土)から12月15日(日)まで、プライム企画展「東北の自然史大図鑑 The Great Natural History of Tohoku」を開催します。東北各地の「化石、岩石、鉱物」に関連する資料に焦点を当て、東北地方の自然史の魅力を紹介する内容になっています。当館SNSでも連日関連情報を発信していますので、ぜひチェックしていただき、秋の散策とあわせて博物館へお越しください。お待ちしています!

第3回博物館講座を開催しました。

 博物館では、館長や当館職員、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野で研究されていることを紹介していただく「博物館講座」を実施しております。
 9月14日(土)は東北芸術工科大学から松田俊介(まつだしゅんすけ)先生を講師にお招きし、第3回博物館講座が開かれました。県内外から多くの方にご参加いただきました。
 講座の演題は「民俗芸能の技と知恵を引き継ぐ」でした。山形県の各地には、遊佐町の番楽「杉沢比山」をはじめ、古くから地域に伝わる民俗芸能が数多く存在します。古くは江戸時代から伝わるというこうした地域の民俗芸能が、少子化などで担い手が不足しているという問題があり、伝統の継承や存続が課題となっています。こうした現状の中、地域外人材の活用(外部化)や、映像や音声の記録を保存・伝達する工夫(情報化)、現代の情勢に合わせ日程や規制を緩和する(意義の問い直し)といった取り組みにより、民俗芸能の技術や意義を後世に伝えていこうという動きがあることを知ることが出来ました。そこには、民俗芸能を守りたいという地域の方々の熱い想いが感じられました。高擶小学校(天童市)では地元の小学校で獅子踊りを継承するなど、子どもたちを通して共存する姿も紹介されました。
 アンケートでは「伝統芸能の保存は大変難しい現実に直面しており、継承への提案があり参考になった。」「知らない芸能もたくさんあることを認識いたしました。後進育成のことについても考えさせられました。」といった意見が寄せられ、民俗芸能の今後について皆さんも考えられていることが伝わりました。今後も専門家による研究成果を知ってもらう貴重な機会として講座を開催したいと思っています。

 次回、第4回博物館講座は10月19日(土)、当館で動物部門を担当している中川裕太学芸員を講師として開催します。詳しくは近日ホームページ上でお知らせしますのでぜひご参加ください。

博物館実習を実施しました

 8月17日(日)~23日(金)の期間、学芸員の資格取得を目指す大学生を対象とした博物館実習を実施しました。今年は、7大学から12名の大学生を実習生として受け入れました。

 常設展示やバックヤードなど、実際の博物館の見学に加えて、各分野の学芸員から資料の取扱い等について講義や演習を通して直接指導を受けたり、企画展示の撤収作業を実際に体験してみたり、教育普及事業や広報活動、他機関との連携など、学芸員の専門分野以外の業務について学んだりして、博物館の運営全般について幅広く知る機会となりました。

 今年は特に、実習期間中に国宝「縄文の女神」を他施設に貸し出す業務に立ち会うことができました。絶対にミスの許されない作業であるため、移動や梱包の手順について何度もシミュレーションを行った上で実行に移すというプロの仕事を、固唾を飲んで見守った経験は極めて貴重なものでした。

 最終日には、実習生が各自テーマを定めて、展示物の解説をしてみるという模擬解説に挑戦しました。各実習生は緊張の中にも、丹念に調べて準備した成果を十分に発揮して、分かりやすく、興味深い解説ができたようです。

 実習に参加した学生には、これを機に博物館への関心をさらに高めて、学芸員という職業を選択肢の一つに加え、今後一層勉学に励んでいただきたいと思います。なお、来年度の実習生の募集については、令和7年1月以降に本館ホームページに公開する予定です。

『白鳥になった人形』のお話

 今はちょうど夏休みということもあり、山形県立博物館分館の教育資料館(旧山形師範学校)でも、親子連れや家族連れのお客様が見られるようになりました。毎年夏休みになると、8月の原爆の日や終戦記念日に合わせて、テレビやラジオ、新聞で戦争に関した報道にふれる機会が多くなります。太平洋戦争が終結して今年で79年を迎えますが、教育資料館の展示室「戦時下の教育」の資料にじっくり見入るお客様の姿が、特に8月は多く見受けられます。

 山形師範学校出身の著名人では特に藤沢周平が知られており、教育資料館の展示室にも藤沢周平コーナーを設けていますが、皆さんは須藤克三を知っていますか?南陽市宮内生まれの教育者・児童文学者で、彼の作品の一つに『白鳥になった人形』という絵本があります。これは戦前に日米友好の証として日本中の小学校や幼稚園に贈られた、通称“青い目の人形”にまつわる実話を基にしたお話です。(山形県内には“青い目の人形”が160体もやってきたのですが、現存が確認されているのは12体です。)お話の簡単なあらすじは以下のようになります。

 ある“青い目の人形”が、山形県内の村山市にあった大倉小学校にあり、可愛がられ大切にされていました。その人形の世話をしていたのは女性の先生でした。やがて戦争が激しくなってくると、すべてアメリカのものは敵視され、とうとう人形を焼くように校長先生に厳命されました。しかし、先生は「罪もない」人形をどうしても焼くことはできません。やむなく、泣く泣く小学校の近くにあった、大倉堤に人形を沈めることになりました。「平和になったら白鳥になって戻っておいで」と声をかけました。やがて戦争が終わり、先生は早く白鳥がやってくるよう祈り続けました。それから何十年もの月日がながれ、白鳥がようやく大倉堤にたくさん飛んできたという話です。

 『白鳥になった人形』は実際にあったお話です。私自身も小学生の時にこの本を読み、子どもながらに、大きな空襲を受けていない田舎の村でも、戦争が人々の身近にあったのだと気づかされました。戦争のない日本で暮らせることがいかにありがたいことかとしみじみ感じました。

 悲しいことに世界ではいまだに戦争が終わらない国や地域があります。先日、大倉堤を訪れました。“青い目の人形”と人形を沈めた先生のことを思いながら、水面を見つめました。皆さん、この8月に改めて、戦争とは何かを身近な家族や友人などと一緒に考えてみませんか。

大倉堤
戦時下の教育 展示室 ジオラマ
戦時中の教科書

高校生学芸員一日体験講座を開催しました

 8月1日(木)、2日(金)、7日(水)に、毎年恒例の高校生学芸員一日体験講座を開催しました。今年は高校側からの要望も踏まえ、従来の2回から3回に増やしたこともあり、延べ54名という大勢の高校生に参加していただきました。

 8月1日(木)は、「山形の歴史やくらしにふれる」というテーマで、主に人文系の展示室とバックヤードの見学に加えて、考古部門、歴史部門、民俗部門の講座を実施しました。発掘された土器の洗浄作業(考古)や明治時代の紙幣の観察(歴史)、自宅の間取りと暮らしについての聞き取り調査(民俗)など、学芸員になったつもりで活動するワークショップを行いました。

 8月2日(金)は、「山形の自然とそのめぐみを知る」というテーマで、主に自然系の展示とバックヤードの見学に加えて、植物部門、動物部門、地学部門の講座を実施しました。標本のつくり方やラベルの書き方(植物)、カブトムシの標本作成(動物)、夏休み館内地質観察体験のイベント準備(地学)など、実際に学芸員が日頃行っていることを体験してもらいました。

 8月7日(水)は、「地域の文化財を巡り学芸員と語る」というテーマで、午前中は、学芸員とともに、教育資料館(旧山形師範学校)、専称寺、御殿堰、文翔館(旧山形県庁及び県会議事堂)を巡りました。午後には、座談会「学芸員ってどんな仕事?」で学芸員5名の熱い思いを聞いた後、グループ討議「こんな博物館が欲しい!」で高校生がアイディアを出し合いました。

 高校生からは3日間とも、とても楽しく有意義であったとの感想をいただき、是非、来年も開催して欲しいとの声がありました。

土器の洗浄
カブトムシの標本作成
イベント準備
文化財を巡る

記念講演会②を開催しました。

 当館では、6月から最上川をテーマとした特別展「海に入るまで濁らざりけり-『母なる川』最上川-」を開催しています。最上川に関わる文学や川絵図、流域に暮らした人々の生活の様子などを知ってもらえるよう、様々な資料を展示しています。

 7月27日(土)、放送大学茨城学習センターの小野寺淳(おのでらあつし)所長をお招きして記念講演会が開催されました。小野寺先生には河川絵図の研究者として、2008年の最上川展でもご講演いただいたご縁があります。

 演題は「河川絵図に描かれた最上川の水運」。最上川は急流で有名ですが、江戸時代の舟運はとても盛んで、小鵜飼船・ひらた船といった川船を使った輸送力は全国有数だったそうです。江戸時代の山形は幕府や大名の領地が入り乱れたため、年貢米を運ぶ商人の船が多かったため、船による荷物の輸送が活発になったとのことでした。

 舟運が盛んになったことは最上川の河川絵図がたくさん作られたことと大きく関係したようです。小野寺先生は最上川の河川絵図をおおきく3つに分類し、それぞれの特色や作成目的について詳しく説明していただきました。講演会の後半は実際に展示を見ながらのギャラリートークも行われ、受講者が小野寺先生の解説に熱心に耳を傾ける様子が見られました。

 受講者からは「最上川の舟運がどのようにして行われていたかよく分かりました」「小野寺先生のお話に引きこまれ興味がわきました」などの感想が寄せられました。

 特別展は8月18日(日)まで開催しています。県指定文化財「松川舟運図屏風」や「羽州川通絵図」をはじめ、最上川を描いた河川絵図を多数展示していますのでぜひご来館ください。

第2回博物館講座を開催しました。

 博物館では、館長や当館職員、大学の先生などを講師としてお招きし、それぞれの専門分野で研究されていることを紹介していただく「博物館講座」を実施しております。
 7月20日(土)は東北芸術工科大学から岡陽一郎(おかよういちろう)先生を講師にお招きし、第2回博物館講座が開かれました。県内外から多くの方にご参加いただきました。
 講座の演題は「聖地・霊場のはじまり-地域社会との関わり」。岡先生は以前、岩手県で一関市で調査研究されており、その経験をもとに中尊寺や骨寺村(ほねでらむら)といった中世寺院や集落などから、地域社会と宗教施設との関わりについてお話しいただきました。
 今ではパワースポットともいわれることもある霊場や聖地は「この世のものとは思えない」美しい光景や変わった地形(山や洞窟等)にあるとされます。こうした聖地はその周辺にある集落が維持管理することで聖地として機能するというお話でした。また、集落周辺の境界にある原生林などは、中世社会においては魔境であり、すぐれた宗教者でなければ立ち入ることも、人の手で開発することもできず、開発されることで聖地・霊場となっていったとのことでした。
 中世社会における宗教観と、修練の場としての聖地・霊場を維持するというお話は、今までの考え方と違った視点から見ることができ、大変興味深いお話でした。
 アンケートでは「大変興味深く拝聴しました」「岡先生の分かりやすい説明のおかげで自分にも理解することができました」と好評でした。今後も専門家による研究成果を知ってもらう貴重な機会として機会として講座を開催したいと思っています。

 次回、第2回博物館講座は9月14日(土)、同じく東北芸術工科大学の松田俊介先生を講師に迎えて開催します。詳しくは近日ホームページ上でお知らせしますのでぜひご参加ください。

来館者数1万人突破セレモニー

6月26日(水)に、今年度の来館者数が1万人を突破し、記念セレモニーが行われました。
これまでにご来館いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

1万人目のお客様は、鶴岡市立朝暘第四小学校の皆さまでした。
セレモニーの後、小学生の皆さまは熱心に館内の展示を見学していらっしゃいました。

なお、当館では8月18日(日)まで、特別展「海に入るまで濁らざりけり ―「母なる川」最上川―」を開催中です。
皆さまのご来館を心よりお待ちしておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

土器でドキドキ!? 出張博物館 in 小国小学校!

山形県立博物館では小中学校の授業に協力する「出前授業」を行っています。

6月26日(水)、小国町立小国小学校にて、ホンモノの土器を触ってもらいながら縄文時代について一緒に勉強しました。

今回は、歴史の学習を始めたばかりの小学6年生(46名)が参加してくれました。

一人一個ずつ配られた土器片をスケッチし、観察してくれた児童のみなさんからは、「ツルツルした所とデコボコした所がある!」「カタツムリみたいな文様がある!」「動かすとキラっと光る!」などなど、本物を触ることでしか得られない感想を聞くことができました。さらに、粘土板に縄(縄文原体)を押し付けて、どうやって文様が施されたのかを体験してもらいました。

また、地元小国町に所在する「下叶水(しもかのみず)遺跡」から発見された土器を用意し、地元の歴史に触れ、地元の縄文時代を感じてもらいました。

これからも当館が所蔵する考古資料を「地域の宝」として活かすことができたら嬉しいです。

写真1:土器を観察しスケッチする児童
写真2:土器を観察して感じたことを発表
写真3:児童が土器について感じたこと
写真4:小国町下叶水遺跡から発見された土器を触ってもらう

記念講演会①を開催しました。

 当館では、6月から最上川をテーマとした特別展「海に入るまで濁らざりけり-『母なる川』最上川-」を開催しています。最上川に関わる文学や川絵図、流域に暮らした人々の生活の様子などを知ってもらえるよう、様々な資料を展示しています。
 6月22日(土)、東北文教大学から菊地和博特任教授をお招きして記念講演会が開催されました。
演題は「最上川舟運で行き交うものと文化・くらし-民俗学の観点から」。菊地先生は以前、当館学芸員として勤務され、平成4年には山形の民俗文化を紹介する特別展「やまがたと最上川-上方文化との交流-」をご担当されました。菊地先生がお持ちの最上川流域の民俗文化についての見識をお話しいただく機会とさせていただきました。
 講演会では、最上川の舟運のあゆみや上方から伝播して定着した祭礼文化、青苧(あおそ)や紅花といった北前船によって上方にもたらされた特産品の話など、山形の民俗文化や産業に関して講演いただきました。また、朝日町出身の柴田謙吾(しばたけんご)氏の業績についてご紹介いただきました。柴田氏はその生涯をかけて最上川流域の文化を熱心に研究され、古文書や文献に記されない船頭や筏(いかだ)乗りを取材し、彼らが持つ深い知識や知恵を記録し紹介しました。船頭の仕事に関係する資料を数多く収集し寄贈されるなど、県立博物館とも深いつながりのある方です。
 参加者からは「最上川の歴史・文化について再認識ができて大変参考になりました」「村山市に住んでいるためとても身近に感じました」「柴田謙吾氏の人生訓、業績に感動しました」など多くの感想が寄せられました。
 特別展は8月18日(日)まで開催しています。柴田氏が10年の歳月をかけて制作した40mの川絵図「最上川絵図」の複製も展示していますのでぜひご覧ください。次回の講演会は7月27日(土)、放送大学茨城学習センターの小野寺淳所長(茨城大学名誉教授)をお招きし「最上川舟運と河川絵図の特色」についてお話しいただきます。ぜひご参加ください。