博物館ブログ

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大名の花押をたくさん展示しています

 現在、山形県立博物館友の会によるイッピン展「真宗大谷派 正覚山心縁寺寺宝 花押巻子」を開催しています。
 
 花押は、文書の末尾などに署名するかわりに書く記号のようなもので、印判と区別して書判(かきはん)とも言われています。印章と同じように証拠を与えるもので、偽作を防ぐため作成には種々の工夫があったようです。なお、わが国では平安時代には用いられていたそうです。

 このたびは、江戸時代の大名花押60点が張り付けられている12メートル以上にも及ぶ巻物を展示しています。江戸時代中期前後の譜代大名の花押が多く、歴代山形藩主の花押も複数あり、見応えのある資料です。山形市七日町の正覚山心縁寺に所蔵されており、心縁寺は、代々の山形城主より厚い信仰をうけてきた由緒あるお寺です。

 花押の収集品として大変貴重であり、今までお寺の門外に出たことはないとお聞きしています。ご住職の御理解・御厚意により実現しました。1月29日(日)までの展示となっています。ぜひご覧ください。

こども学芸員、博物館を紹介しました!(報告)について掲載しました

 1月9日(月・祝)「成人の日」は、無料開館日でした。そこで、山形市立第七小学校5年生の協力を受けて、博物館の資料を来館された皆様に解説していただく「こども学芸員」というイベントを開催しました。

 山形七小の5年生のみなさんは、総合的な学習の授業で県立博物館を取り上げてくださり、約半年もの間県立博物館をどうPRするかについて話し合ってくれました。今回のイベントでは、授業で学習したことを参考に、資料の解説というかたちで学芸員の仕事を体験してもらいました。休日にもかかわらず、16名の小学生が意欲的に参加してくれました。
 あわせて「わたしたちがつくる未来の博物館」というイベントを開催しました。これは、子どもたちが持っている「わたしの宝物」を博物館で展示し、一日学芸員になって解説するというものです。なかなか難しいテーマでしたが、2名の方が応募してくれました。
 今日は3連休の最終日ということもあり、また冬晴れの天気のもと、多くの来館者が来てくれました。こども学芸員たちは、事前にしっかりと調べ学習をもとに、来館者に丁寧に解説をしてくれました。中には、冬休み中に発表の練習をしてくれた子もいて、堂々と解説する姿はすばらしかったです。
 「わたしの宝物」の展示では、高校1年生が「曾祖母との思い出の絵本」を展示し、小さいときのエピソードや今はあまり会えない曾祖母への感謝の思いなどをお話ししてくれました。小学生が展示した「シーグラス」は海で拾った時の思い出などを解説していました。

 今回のイベントでは、山形市立第七小学校の先生方、保護者の皆様方からたくさんご協力いただきました。この場をお借りして感謝申し上げます。今後も、こうした行事を計画して、ホームページやツイッターでご案内したいと思いますので、ぜひご参加ください。

博物館の楽しみ方

今年ももうすぐ終わりですね。あっという間です…!
博物館では先日、プライム企画展「女神たちの饗宴」が大盛況のうちに閉展しました。
ご来館いただいた皆さま、ありがとうございました!

プライム企画展の撤収後、一時ガランとしてしまった第三展示室。しかし、現在は民俗資料の展示が復活しています!
こちらの展示も、実は企画展に負けず劣らず面白い資料だらけ!その中から少しだけご紹介します。

張子人形(とら) 
笹野彫(うさぎ)

いかがですか?どちらも伝統的な人形ですが、とっても可愛いですよね!
手づくりならではの温もりが伝わってきます。色の塗り方や彫り方など、職人技を間近で確認することもできますよ。
これらは写真ではうまく伝えられませんので、ぜひ実物をご覧いただきたいです!

「とら」は今年の干支(えと)。「うさぎ」は来年の干支ですね。
そういえば、十二支(じゅうにし)の仲間の「いのしし」は体験コーナーに剥製の展示が、第二展示室には「うし」が描かれている札の展示がある…。
博物館で十二支がそろうかも?ぜひ探してみてください!

このように、少し違う視点から見学する博物館も面白いかもしれませんね!
ルールやマナーさえきちんと守れば、博物館の楽しみ方は無限です!
ぜひ、自分だけの博物館の楽しみ方をたくさん見つけていただきたいと思います!

※ 第三展示室の民俗資料の展示は、特別展やプライム企画展開催中はご覧いただけません。ご注意ください!
※ 博物館は12月28日(水)~2023年1月4日(水)まで休館です

期間限定の常設展です

 12月11日(日)、プライム企画展「女神たちの饗宴-『縄文の女神』国宝指定10周年-」を無事に終えることができました。たくさんご来館いただき、誠にありがとうございました。

 プライム企画展の終了によって、会場であった第3展示室は、常設の展示に戻りました。「近代山形くらしのうつりかわり」をテーマに、山形県の誕生から現代にいたるまで、近代化していく山形の姿や、そのなかで伝統を受け継ぎ発展させていこうとする人びとのくらしを展示しています。「街角の風俗」「山形の郷土玩具」「雪と山形」「山形のやきもの」を柱に構成しています。くらしに密着したテーマで、懐かしい生活用具もたくさん展示しています。
 これらの展示資料は、第3展示室が「企画展」の会場になると、撤去し収蔵されます。「常設展示」ですが、約半年は見ることができません。いわば期間限定ですので、ぜひご来館ください。

 今年の開館は、12月27日(火)までとなっています。多くのご利用ありがとうございました。来年も引続き、山形県立博物館をよろしくお願いいたします。

プライム企画展に舟形町からめがみちゃんが来てくれました!(報告)

 10月1日(土)から、博物館ではプライム企画展「女神たちの饗宴-『縄文の女神』国宝指定10周年-」を開催しております。国宝土偶「縄文の女神」が国宝に指定されてから10周年にあたるのを記念して、全国から国宝土偶(複製)を集め、5体全てを一堂に会して展示しております。
 閉展まで、あと一週間となった12月4日(日)に、なんと「縄文の女神のふるさと」舟形町から、「めがみちゃん」がかけつけてくれました。とてもかわいらしい姿で、プライム企画展を盛り上げてくれました。
 県立博物館に来てくれるのが決まったのが2日前と、急な日程だったため告知が遅れてしまいましたが、小雨が降る悪天候にもかかわらず、第4回展示解説会に参加された皆様や、近くに住む小学生など多くの方が来館して、めがみちゃんと触れ合ってもらえました。ありがとうございます。
 中には仙台市から来館されたという親子もいらっしゃいました。お母さんからは「こんなイベントがあるのは知らなかったけど、たまたま会うことができて良かった」というお話を聞くことができました。企画展最後のイベントを、楽しい思い出にしていただけたならうれしい限りです。
 縄文時代の土偶をテーマとした今年のプライム企画展、開催期間もいよいよあと1週間。12月11日(日)までの開催となります。皆様のご来館をお待ちしています。

プライム企画展記念講演会③を開催しました(報告)

 10月1日(土)から、博物館ではプライム企画展「女神たちの饗宴-『縄文の女神』国宝指定10周年-」を開催しております。国宝土偶「縄文の女神」が国宝に指定されてから10周年にあたるのを記念して、全国から国宝土偶(複製)を集め、5体全てを一堂に会して展示しております。
 11月6日(日)は、山形県埋蔵文化財センターから2名の方を講師にお招きし、「縄文の女神」が作成された縄文時代の山形造形についてお話ししていただきました。
 小林圭一氏からは「西ノ前型土偶と縄文時代中期の地域社会」と題して、村山市の西海渕遺跡に見られる環濠集落など、縄文時代中期の集落跡を取り上げ、縄文人の生活の様子や時代による変化などについて、遺跡の調査からわかったことを元にお話しいただきました。
 菅原哲文氏の演題は「山形県南部の縄文時代集落と土偶」。山形県南部の大規模な縄文集落跡である台ノ上遺跡(米沢市)を題材として、土偶や土器、住居跡、貯蔵やお墓として使われた土坑などから当時のくらしについてお話しいただきました。土偶や土器の形式を丁寧にひも解くと、北東北や北陸、関東の影響をうけていることが分かるとのことで、当時でも広い地域との交流があったことが伺えました。
 今回講師をお引き受けいただいたお二方は、山形県の埋蔵文化財の発掘調査において最前線で活躍されています。お忙しい中にもかかわらず講演をお引き受けいただきありがとうございました。たくさんの方にご参加いただき、貴重なお話を聞くことができて素晴らしい時間となりました。

プライム企画展体験イベント②を開催しました(報告)

 10月1日(土)から、博物館ではプライム企画展「女神たちの饗宴-『縄文の女神』国宝指定10周年-」を開催しております。国宝土偶「縄文の女神」が国宝に指定されてから10周年にあたるのを記念して、全国から国宝土偶(複製)を集め、5体全てを一堂に会して展示しております。
 11月23日(水・祝)は体験イベント「親子で勾玉(まがたま)をつくろう」を開催しました。今回は県立うきたむ風土記の丘考古資料館の伊藤さんにご協力いただきました。滑石(かっせき)という柔らかな石を紙やすりで削り、世界に一つの自分だけの勾玉をつくりました。
 あいにくの雨模様にもかかわらず、たくさんの方に参加してもらいました。熱心に石を削って、思い思いの勾玉をイメージして仕上げていました。最後に水の中で丁寧に削ってつるつるに磨きあげて完成させた勾玉と縄文服で、記念写真を撮る親子もたくさんいました。今年最後の祝日が、楽しい思い出になったのではないでしょうか。
 縄文時代の土偶をテーマとした今年のプライム企画展、開催期間もあとわずかとなりました。12月11日(日)までの開催となります。皆様のご来館をお待ちしています。

受付のつぶやき

みなさん、こんにちは!
寒さが身に染みる季節になりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
霞城公園では様々な樹木を目にしますが、公園内にある当博物館周辺も木々が落葉したり紅葉したりと、秋の深まりを実感する光景が見られるようになりました。
先日当館周辺の秋の様子を写真におさめましたので、ご紹介します♪

まずは西側から、目にも鮮やかなドウタンツツジの赤をご覧ください。

同じく西側では、紅葉する木々のなかジュウガツザクラが可憐な花を咲かせていました。

普段は非公開となっている当館南側では、太古の歴史を感じさせる埋没林の背景で鮮やかな黄色の紅葉が見られました。

最後に、駐車場北側の紅葉を当館2階から撮影した写真です。
ちょっと不思議な雰囲気に写りました!

いろんな秋の風景に囲まれた博物館では、現在プライム企画展「女神たちの饗宴-『縄文の女神』国宝指定10周年-」を開催しています。国宝に指定されている土偶(複製)5体全てが一堂に会する貴重な機会です。12月11日(日)までの会期となっておりますので、どうぞお見逃しなく!
寒さが増す一方ですが、防寒と感染症対策を万全にしてぜひ晩秋の霞城公園、そして博物館へお越しください。お待ちしております!

館長オススメ展示資料「環頭大刀」

 山形県立博物館における考古部門の展示物と言えば、誰しもが国宝の土偶「縄文の女神」を思い浮かべると思います。世界的な知名度もあり、現在開催中のプライム企画『女神たちの饗宴 ―「縄文の女神」国宝指定10周年―』は、とても好評をいただいております。
 その一方で、考古部門の他の展示資料は、どうしても二番手になりがちです。しかし、ほかにも、山形県の宝がたくさん収蔵・展示されています。そのうち、館長お薦めとして、山形市の大之越(だいのこし)古墳から出土した「環頭(かんとう)大刀」をご紹介します。

 5世紀後半~末の築造と考えられる大之越古墳は、直径約15mの円墳で、山形盆地の南西部に位置する山形市門伝地区にあり、古墳の西方約500m先には、ピラミッドのような富神山がそそり立っています。富神山は石が豊富で、大之越古墳や東北地方最大級の埴輪をもつ円墳の菅沢2号古墳(大之越古墳より東南東へ約1,200m)などに使用されています。
 昭和53年(1978年)、道路工事中に石棺が露出し、そこから40点余りの鉄製品を含む豊富な副葬品が出土したことは驚きをもって伝えられました。その中で最も注目された副葬品が環頭大刀です。全長約95cmで、刀部は約73 cm、茎部は約22 cmで、グリップエンドに環状の装飾が付いています。環頭には鳳凰が表され、口ばしには金象嵌(象嵌:素材の表面に、他もしくは同種の材料を嵌(は)め込む技術)が施されています。このような貴金属で装飾を施した「装飾付大刀」は、多種多様なものが日本列島に流通しており、大之越古墳の環頭大刀は、製作技法と装飾の特徴から、朝鮮半島南部の百済もしくは伽耶での製作と考えられるそうです。(なお、日本列島で装飾付大刀の製作が本格化するのは6世紀後半とされており、562年の大伽耶の滅亡により工人集団が渡来したのが一因との説があります。)そして、環頭大刀は日本列島に舶載され、当時の中央政権(ヤマト政権)から大之越古墳に葬られることになる人物に与えられたのではないかと思われています。
 『大之越古墳発掘調査報告書』(山形県教育委員会/1979年)では、ヤマト政権においても第一級の宝器とみなすことができる環頭大刀のほか多数の副葬品があったことから、大之越古墳に葬られた人物とヤマト政権は、単なる文化の交流を越えた関係であり、ヤマト政権がかなり影響力をもって環頭大刀や刀剣などを賜与したという政治的な結合であったと推測しています。
 古墳時代において、日本海側の古墳の北限は山形県に当たり、だいたい庄内地方から山形盆地を結ぶラインとされています。これをヤマト政権の強い影響力が及ぶ北限と考えると、大之越古墳に葬られた人物は、東北地方への進出をもくろむヤマト政権と密接に結びつき、最前線に立って重要な役割を担っていた山形盆地の首長とは考えられないでしょうか。大之越古墳の環頭大刀は、当時のヤマト政権と山形をグルーバルかつダイナミックに結び付けてくれます。この環頭大刀と並んで、全長約84 cmの鉄剣、全長約82 cmの鉄刀、鉄鏃(やじり)16本なども展示しています。時を超えて当時の山形の姿に思いをめぐらせていただければと思います。

 プライム企画『女神たちの饗宴 ―「縄文の女神」国宝指定10周年―』の開期は、残り1か月を切りました。皆さまのご来館をおまちしております。そして、常設展示にも改めてご注目ください。

※ 大之越古墳の環頭大刀の図版については、下記アドレスからご覧ください。
   https://www.yamagata-museum.jp/treasures/dainokoshi-kofun

※ 大之越古墳の様子。2番目の写真の中央が富神山です。

<参考>
・『大之越古墳発掘調査報告書』(山形県教育委員会/1979年)
・橋本英将「大之越古墳出土の環頭大刀について」(山形県立博物館『出羽国成立以前の山形』2011年)
・金宇大「刀剣から読む古代朝鮮と倭」(古代歴史文化協議会『第4回古代歴史文化講演会 資料集』2019年)

プライム企画展記念講演会②を開催しました(報告)

 10月1日(土)から、博物館ではプライム企画展「女神たちの饗宴-『縄文の女神』国宝指定10周年-」を開催しております。国宝土偶「縄文の女神」が国宝に指定されてから10周年にあたるのを記念して、全国から国宝土偶(複製)を集め、5体全てを一堂に会して展示しております。
 11月6日(日)は、山形県考古学会会長の阿部明彦先生をお招きし、「縄文の女神」の造形における新しい考察を紹介していただきました。
 「縄文の女神」が他の土偶に比べて赤みがかった肌色が美しく発色されていることから、化粧土による装飾が施されていること、脚部側面に見られる修復痕から丁寧につくられたこと、右脚に重心を置いて今にも前に歩き出そうとする姿を表していることなど、長年「縄文の女神」を観察してこられた阿部先生ならではのお話しを聞くことができました。また、西ノ前型土偶や鼓形の石棒の分布圏が重なることから、蔵王山麓に広がりを見せる文化圏についての考察をお話しいただきました。
 山形県の埋蔵文化財研究に長らく関わられたその経験と知識に基づくお話しは興味深く、たくさん学ばせていただきました。
 講演の後は展示室に移動し、ギャラリートークもしていただきました。お忙しいにもかかわらず、参加者の質問にもお答えいただき、楽しい時を過ごすことができました。

 次回の記念講演会③は11月20日(日)に、(公財)山形県埋蔵文化財センターの小林圭一先生、菅原哲文先生の両名をお招きして開催します。現在、埋蔵文化財調査の最前線に立たれているお二方からお話しをお聞きします。当館ホームページで募集を開始しておりますので、こちらもぜひご参加ください。