博物館ブログ

2024年5月
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子どもの日イベント振り返り

5月5日の子どもの日は、毎年恒例の無料開館日でした。
600人を超える方にご来館いただき、12日まで行われていた第6回やまはくセレクション展をはじめ、子どもの日の特別イベントをお楽しみいただきました。

特別イベントはセレクション展探検シート、パズル版グンカンツミキ、みちのくこけし塗り絵、特別展プレイベント、国宝解説会と、もりだくさんの内容で実施しました。
中でも一番たくさんの方に参加していただいたイベントは、セレクション展探検シートでした。受付で探検シートを受け取って、セレクション展を中心に博物館を探検できるように、資料の見どころを探してみるという内容でした。小さなお子様が頑張って展示を見て探したり、お姉ちゃんが弟にヒントを出したりしている光景が見られました。

【どんなこけしを作ろうかな】

きっと、ふだん見慣れているものや景色の中にわくわくするような魅力を見つけてもらえたと思います。

さらに、厚紙のパーツで船を作って遊ぶパズル版グンカンツミキでは、なんと展示室で見つけたダイカイギュウを作ってくれるお子様がいらっしゃり、当館スタッフに驚きと感動を与えてくれました。まさしく子ども達のイマジネーションの力です!

【クジラを見ながらふね作り・・・ イマジネーションの海原が広がります】

そして極めつけは今年度に着任した考古担当学芸員による国宝解説会です。講堂での座学と、展示室で実物をみながらの解説などこちらも充実した内容でのデビューでした。

【新しい学芸員による国宝土偶の解説会デビュー】

また、今回の子どもの日では館内に用意されたアンケートを回答していただいた方を対象に、当館特製のミュージアムカードをお渡ししました。このミュージアムカードには4月から館内の一部資料に設置された音声ガイドを聞くことができるQRコードがあり、館内の音声ガイドをお家でお楽しみいただくことができます。

【アンケートに答えてミュージアムカード!なにがでるかな・・・】

今年度はまだまだ始まったばかりです。山形県立博物館では、一年間を通して楽しく、充実した展示やイベントを行いますので、今後もぜひご期待ください。

博物館講座のすすめ

こんにちは。青々とした新緑を眺めながら霞城公園を散策すると、爽やかな気持ちになれます。健康にも良さそうですね。しっかり日課にしたいものです。
さて、今回は、やまはくで毎年開催している「博物館講座」についてご紹介したいと思います。
「博物館講座」では、当館職員に加えて、外部研究機関の研究者の方々が講師を務めてくださり、山形県内の歴史、自然などの調査研究の成果等を講義する生涯学習の場として親しまれております。
毎回受講してくださるリピーターの方も多く、今年度は例年よりも1回増えての開催になります。
演題などは随時ホームページに掲載予定ですので、楽しみにお待ちください。

講座は、基本的に大人向けのものとなっておりますが、各専門分野に強い興味関心を持つ小学生が参加する姿もちらほらと。未来に向かって勉学に励む姿が眩しいです。

昨年は、地学部門の瀬戸学芸員による初講座「ブラヤマガタ」も大好評でした。

歴代館長による館長講座もバラエティに富んだ内容です。さまざまな質問で盛り上がることがあります。

今年度は、10月に動物部門の中川学芸員、令和7年2月に民俗部門の稲垣学芸員による初講座があります。12月には齋藤館長による館長講座です。
講座は、事前申込制【先着順】となっており、当館ホームページからの申込みをお願いいたします。
受講料は無料となっておりますが、展示をご覧になる際には入館料が必要となりますのでご注意ください。
第1回目は、6月8日 (土)に竹原万雄氏(東北大学東北アジア研究センター上廣歴史資料学研究部門助教)による「江戸・明治時代の旅と山形」の講座があります。

お申し込みは、5月21日(火)からです。皆さまのご参加をお待ちしております!

第6回やまはくセレクション展ウラ話と民俗資料

霞城公園の今年のサクラ

霞城公園は例年よりも早く春爛漫となり、県立博物館もシャワーのような桜吹雪に包まれました。お花見にいらした方の中には、当館を見学された方も多くいらっしゃいました。きっと好評開催中の第6回やまはくセレクション展もお楽しみいただけたかと思います。

実は今回のセレクション展の取りまとめを民俗担当が行ないました。そこで少しだけセレクション展とともに学芸員のお仕事(活動)をお話ししたいと思います。

セレクション展の展示風景

今回を含めてこれまでに6回行われてきた「やまはくセレクション展」は、当館が新たに寄贈を受けた資料の他に、調査や整理が一段落した資料を展示しています。

今回のセレクション展では、初代山形県令三島通庸の佩刀や山形市で発見された化石木などを目玉の展示資料としています。そして、化石木の奥には、ハイイロオカミなど、たくさんの動物の剥製があります。この動物の剥製は去年大好評だったBones展で、資料をお借りしてきた博物館や個人の方から寄贈を受けた物を展示しています。

動物のはく製たち

博物館が貴重な物を集めることを「資料収集」といって、植物や昆虫を捕まえてくる「採集」や、古いお家の蔵で見つかった古い記録や道具を譲っていただく「寄贈」、お店や専門業者の方からお金を払って買い取る「購入」など様々な方法があります。たくさんの方々からご協力をいただいたことに感謝しながら、学芸員が一つ一つの物の価値を調べた上で博物館に受入れるか検討しています。

こうして集められた資料は、博物館の専用の倉庫(収蔵庫)で大切に保管していきますが、ずっとしまったままではありません。時々取り出して破損や汚れ、傷みがないかなど学芸員が状態を点検します。調査や研究するためにも良い状態で保存されないと、せっかくいただいた資料が資料としての役割を充分に発揮することができません。

今回、民俗分野から展示したたくさんのおもちゃは、8月に学芸員実習で整理・点検した資料です。(学芸員実習は、大学や短大で学芸員の資格を取得する課程を受けている学生が、資格を得るために実際の博物館で実習を行なう研修です)。実習生の学生達は当館での実習を通して、資料の点検や取扱いだけでなく、どのような展示が効果的か、どんな学びのイベントを行なうかなど、様々な学芸員の仕事に実際に関りながら学ぶことができます。

民俗展示のおもちゃ

 また、博物館で適切に管理するためにも、寄贈を受けた際にはどんな資料なのか調査を行います。たとえば民俗分野では、人々の生活の特徴や移り変わりを知るために資料を収集しますが、そのほとんどが古い道具や古文書などです。こうした資料はどのように調査研究するでしょうか。

県内での民俗資料の整理

私は仕事の一環で、旧家の蔵の中で古い道具を調べることがあります。中には江戸時代の物もあれば、2000年以降まで使われた最近の道具もあります。当然、古いものは貴重なものですが、新しいものも数十年後には人々の生活を知る必要な手がかりになります。

古文書や記録などは書いてある文字を読んで、情報を得ることができます。古い道具は使った人などから様々なお話を聞いていきます。そうすることでどこにでもある道具でも、使った人の工夫やコツ、感想などで他とは違う使い方がわかるかもしれません。

東根市の猪子踊り

もちろん、「物そのもの」の希少さも重要ですが、資料に関連する情報をたくさん集めることで資料の価値として記録します。時には踊りや言葉、技術など形のないものについても調査を行うことがあります。どんな服を着たか、どんなものを食べたのか、どんな仕事をしたのか、どんな人とどんなふうに関わったのかなど、大まかな手段や内容は同じでも、詳細は一人一人で必ず違います。

元々の所有者の方や関係者の方にご協力をいただいて行われた調査で得られた資料や情報を記録としてまとめることで、資料が増えて充実した博物館になっていきます。

第2展示室の民俗展示の民家

民俗は「人々の暮らし」です。人々の暮らしを担当している私は、県民一人一人がどんな風に暮らしてきたのか、暮らしているのかを追究しています。言わば、私にとっては県民の方々は先生でもあります。地域の中で移り変わってきたものも、変わらずに残そうとされているものもたくさんあるなかで、私たちはどんなことを考えてきたのでしょうか。

「どうしてこんな言い伝えがあるんだろう?」「このお祭りはどうやって行われているんだろう?」些細なきっかけで芽生えた疑問にも、漠然と感じた果てしない疑問にも、博物館にその答えやヒントがあるかもしれません。答えが見つかった時、私達は自分のことも相手のことももっと理解できるようになるはずです。だからこそ、県立博物館としてもまだまだ学ぶことがたくさんあります。

山形や日本で暮らしてきた人達がどんな思いで日々の生活を送ってきたのか。これからも学芸員の調査活動を通して得られた様々な魅力を、ただの面白さで終わらない発信をすることで、地域の理解につなげていきたいです。