博物館ブログ

2022年8月
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真室川町との「共創」

 8月28日をもって、特別展「発掘30周年・マムロガワクジラ、新生代の海を泳ぐ ~やまがた北部の古生物~」を無事に終えることができました。行動制限がない夏休みもあり、県内外から多数のご来館をいただきました。おかげさまで、コロナ禍以前に迫る来館者数となりました。また、新聞やテレビなど報道関係各社からは、期間を通して興味深くマムロガワクジラを取り上げていただきました。誠にありがとうございました。

 さて、今回の特別展では、発掘地である真室川町当局と早々に連携・協働して、「新しいこと」や「新しいもの」をつくり出すことができました。
 例えば、一つ目は新しい学びで、マムロガワクジラを素材とした地域学習です。真室川町立小中学校において、担当学芸員が出向いた出張授業や、当館への見学と解説を行い、マムロガワクジラを題材に、地域をより深く理解する学習を展開することができました。内陸である真室川町から、たくさんの海棲生物の化石が発見される意外性から始まり、クジラの進化や盆地の成り立ちなどを興味津々に学んでくれました。さらに、この学びを踏まえ、児童生徒によるマムロガワクジラ絵画展という連携事業を実施することができました。
 二つ目は新しい町資源の創造であり、マムロガワクジラを活用した地域活性化の取り組みです。一例として、真室川町を含む最上地方には、「くじら(くぢら)餅」という古くから伝わる郷土菓子があります。真室川町が町内の菓子店と協力して、「マムロガワクジラのくぢら餅」を製作しました。マムロガワクジラとくじら餅を掛け合わせた新商品です。さっそく8月3日と28日、当館において新田隆治町長から来館者へプレゼントするイベントが行われました。県外からの来館者は、真室川町とくじら餅を初めて知った方も多く、マムロガワクジラを関連付けながら覚えていただく機会となりました。町のPRにも一役買うことができました。他にも、真室川町からは発掘地点に案内掲示を設置していただいています。

 当館が掲げる博物館の役割の一つに、「新しい価値を創造する施設」があります。特別展の共催であった真室川町とは、「連携」「協働」を深めながら円滑に取り組みことができました。さらに一歩進めて、新たな価値を「共創」することができたと自己評価しているところです。

 さて、次の企画展示会は、10月1日~12月11日を開期としたプライム企画展になります。その準備のため、現在、第3展示室は閉鎖となっています。9月30日までは、第一、第二展示室のみの開館となりますので、ご了解くださるようよろしくお願いします。

※ くじら(くぢら)餅については、以下に説明がありますので、ご参照ください。

https://www.pref.yamagata.jp/020026/kensei/joho/koho/mailmag/pride/kujiramoti.html

国宝土偶「縄文の女神」展示解説会③

 8月14日(日)に第3回の国宝土偶「縄文の女神」展示解説会を実施いたしました。限られた時間での解説会でしたが、熱心に耳を傾けてくださいました。本当に感謝申し上げます。
 次回は10月22日(土)です(プライム企画展の展示解説会を兼ねています)。当館ホームページからの事前申込制になりますので、ホームページの告知をご覧ください。

特別展は8月28日まで

 今年の夏も大変暑いですね。皆さま体調の管理にはお気をつけください。
 夏と言えば、海に行きたい!でも暑すぎる、日差しも強すぎる…。そこで、おすすめしたいのが、特別展「発掘30周年・マムロガワクジラ、新生代の海を泳ぐ~やまがた北部の古生物~」です。
 「マムロガワクジラ」とは、山形県真室川町大沢の山中で発見された約600万年前の鯨類化石の総称です。マッコウクジラ、セミクジラ、ナガスクジラなどの多数の個体が見つかり、多くのクジラが一カ所にまとまって発掘された例は国内では珍しく、クジラの進化を伝える上で重要な発見とされています。
 1992~1994年に発掘調査に携わった地学部門の長澤学芸員が本企画展を担当しました。
 今年で発掘から30年を迎えたことから、史上初となるマムロガワクジラの全標本を公開し、真室川町の皆さんをはじめ、化石ファン、クジラがお好きな方たちからも熱い声援をいただいております。
 東北地方は、北西太平洋の中緯度に位置し、静かな入り江が多いという鯨たちにとって住み心地の良い環境だったことから、様々な鯨化石が発見されています。鯨類化石と現生鯨類の骨格標本を比較して見ていただければと思います。
 他にも貝類、サメ類、鰭脚類(ききゃくるい)などの化石、新庄盆地の多様な化石も展示中です。
 特別展は、第三展示室で開催しておりますが、第一展示室はじめの「山形のなりたち」コーナー、展示ビデオ「山形の大地」を併せて見ていただくと、豊かな海であった当時の山形県の環境がイメージしやすいかもしれません。ぜひ常設展もお楽しみください。
 また、お話を聞いてみたい!という方におすすめしたいのは、8月20日(土)に開催される記念講演会「マムロガワクジラと山形の古生物」です。展示解説会でも、分かりやすく丁寧で面白い!とご好評いただいている長澤学芸員の講話をじっくり聞ける貴重な機会。ホームページからのお申込みをお待ちしております。

 長澤学芸員の出張授業を受けた真室川町の小・中学生による自由画展も開催中です。素敵な作品たちに思わず目が奪われます。お気に入りのクジラ探しも楽しいですね。こちらは体験広場に展示中です。

 特別展及び自由画展も8月28日(日)までとなっております。
 夏の思い出のひとつに、太古の海に飛び込んでみてはいかがでしょうか。