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特別解説会!「土偶のナゾを読み解くーなぜ縄文の女神には顔がないのか?ー」

 今年から新規博物館事業としてスタートした国宝土偶「縄文の女神」特別解説会を開催!
第一回目は縄文文化研究に取り組まれている瀬口眞司氏(公益財団法人滋賀県文化財保護協会企画整理課長)を講師にお招きし、土偶のナゾを読み解いていただきました。
 当館が所蔵する国宝土偶「縄文の女神」。この美しい姿かたちをもつ土偶は、縄文時代の土偶造形の到達点の一つを示す優品だとされています。しかし、なぜかこの土偶には「顔の表現」がありません。今回の講座では、中部高地の土偶や日本最古級の土偶の分析結果を加味しながら、土偶のナゾを読み解き、縄文の女神に顔がない理由を解き明かしていただきました。
 ナゾを解くカギは頭部と胴部パーツの作り分けにありそうです。頭部は取りつくもの(甲)である一方で、胴部は取りつかれることを待つもの(乙)であり、土偶とは(甲)が(乙)にとりつくことで完成するものであるということでした。初期土偶をさかのぼっていくと、それらには頭部顔面表現がなく、凹みや穴といった表現が(乙)にされることが多いようです。基本的には(甲)は表現されない(見えない)霊的存在であり、(乙)は依代としての機能があるようです。これまで見つかった土偶を詳細に見ていくと、うつろ(満たされてないもの)な表現が施される場所も時代が新しくなるにつれて、前面から頭頂部へ、そして背面へと移っていく様相を呈します。そうしたなかで、初期土偶の本質を引継ぎ、顔面表現が無く、依代としての「縄文の女神」が成立しているという見解を示されました。
 本講座には30名の方にご参加いただき、熱心にメモを取りながら、瀬口講師の話に耳を傾けていらっしゃいました。質疑応答も活発に行われ、土偶の本質に迫る質問が多数寄せられました。
 参加者からは、「難解な内容かと身構えたが、先生の軽妙洒脱な解説で大変勉強になった。」「今までの疑問がかなり払拭出来た。」「土偶の後頭部の渦巻き模様が単に縄文の渦ではなく、意味が分かってすっきりした。」「他にも様々な説の説明がある中で、講師の説は目から鱗だし、つじつまが合っており、大変有意義だった。」「今回例に挙げられていた土偶以外もいろんな種類の土偶があると思うが、同じ解釈で説明できるのか、また別の理由で作られた土偶もあるとのお考えなのか、お聞きしたかった。」などの感想が挙げられました。
 参加された方は、講師の話をお聞きして一つのナゾを解いていただきましたが、たくさん見つかっている他の土偶にも疑問を持ちながら、新しい視点で鑑賞するきっかけになったようです。
 土偶に関する特別解説会は、次年度も開催予定です。また、今回参加できなかったけど、土偶について話を聞いてみたいという方は、年明け1月12日(成人の日)に当館学芸員が解説しますので、ご参加ください。

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