館長室だより(平成24年度)

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2012/06/01

6月の窓

Tweet ThisSend to Facebook | by y0000
 5月下旬に山形市郊外をサイクリングしていた時、道路脇の田んぼではちょうど田植えをしているところでした。大雪の影響か、例年よりは少し遅いようですが、6月5日は二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」にあたります。
 ある本によれば、「芒」とは「のぎ」すなわちイネなどの穀物の先端にある硬い毛のことで「禾」とも書きます。「のぎへん」という語の方がよく知られていますが、芒種とは「のぎ」のある穀物を植える時期ということになります。

 田植えを詠んだ俳句もたくさんありますが、芭蕉は、敬愛する西行法師が立ち寄った那須の遊行柳のもとで、次の句を詠んでいます。

  田一枚 植えて立ち去る 柳かな ……… 芭蕉

 「館長室だより・5月の窓」で、(1)「いちかっこ」と言い「いちまる」と言うのは山形だけで、全国的にはそれぞれ「かっこいち」や「まるいち」と言うことを書きました。その詳しい理由はわかっていないそうですが、5月17日から本館で開催している企画展「山形師範学校」では、師範学校を卒業して県内の小学校の先生になった人がこの呼び方を広めていったという説を紹介しています。
「内ズック」や「大判用紙」も山形独自の表現であることを先月書きましたが、普通は「内履き(または上履き)」や「模造紙」と言うそうです。

 山形師範学校の卒業生の一人に作家の藤沢周平がいることから、藤沢周平自筆の原稿も展示しています。
 藤沢周平は、昭和2(1927)年現在の鶴岡市高坂に生まれ、山形県立鶴岡中学校(現在の鶴岡南高校)卒業後、昭和21年山形師範学校に入学しました。教職を目指して学業に励む傍ら、文芸活動にも熱中して、校内の同人雑誌『砕氷船』にも参加しました。卒業後は中学校の先生になりましたが、病気のため教員を辞め、東京で会社勤めをしながら小説を書いていました。昭和48(1973)年に直木賞を受賞し、その後「蝉しぐれ」などの時代小説の数々を発表し、映画化された作品も多数あります。
 
 最初の写真は、今回展示している自筆原稿の一つです。もう1枚の写真は、昭和28(1953)年に旧山形師範学校本館の塔屋に設置された時計で、「山形大学教育学部第一回卒業生一同」の文字を見ることができます。昭和24(1949)年には、山形師範学校から山形大学教育学部が発足していたのです。

*企画展の会場では写真撮影禁止となっていますが、今回は、ホームページに載せるため、許可をいただいて撮影させていただきました。


 企画展「山形師範学校」は6月17日までとなっておりますが、月末の30日から9月17日まで企画展「豊穣と祈り」を開催します。国宝に指定されることになった西ノ前遺跡出土の土偶「縄文の女神」も実物を展示します。 他にも、長野県棚畑遺跡出土の土偶「縄文のビーナス」や、青森県三内丸山遺跡出土の大型板状土偶など、全国的に有名な土偶も展示いたします。
 棚畑遺跡の土偶は、土偶としては初めて国宝に指定されたもので、「縄文のビーナス」として商標登録されているため、今回の国宝指定を機に、舟形町が「縄文の女神」で商標登録を申請することになりました。県立博物館でも、親しまれた「縄文のビーナス」に代わって、「縄文の女神」という愛称が早く定着するように、館内の表示なども新しい愛称にしたところです。初日の6月30日(土)には、舟形町の町長さんにもおいでいただき、舟形町立富長小学校のみなさんから「猿羽根山太鼓」を披露していただくことになっています。
 
 県立博物館での企画展に先立って、6月8日から10日まで、舟形町中央公民館で「西ノ前土偶里帰り展」が開催されることになっており、私も出席させていただきます。国宝に指定されることが決まった後初めての実物展示となりますので、こちらへのご来館もお待ちしております。

*写真は、30日からの企画展のパンフレットです。


 最後に、今月から、博物館で展示している資料などについて紹介していきたいと思います。県立博物館には3つの展示室があり、第一展示室では「豊かな自然とそのめぐみ」を、第二展示室では「山形の大地に刻まれた歴史」を、第三展示室では「近代山形くらしのうつりかわり」をメインテーマに様々な資料を展示しています。今回は、第二展示室にある日向洞穴を紹介します。
 
 これは、高畠町の日向洞穴での生活の様子を再現したもので、約1万年前の縄文時代の草創期の人々が、弓や槍などでけものや魚や水鳥を捕え、貝や木の実を採集して暮らしていました。日向洞穴の近くには、大立洞穴や火箱岩洞穴などもあります。私は高畠町のいろんな所に行ったことがありますが、ここには行ったことがなかったので、先日行ってきました。国道13号線を南下し白竜湖を過ぎてから東に入ったところにある湯沼温泉の近くにあり、私も昨年このすぐ近くを通ったことがわかりました。
 道路脇には「日向洞窟」の案内板があり、昨年はこれに気づかずに通り過ぎたのだと思います。写真は、その案内板と道路から少し入ったところにある日向洞窟の入り口です。高畠町では「洞窟」の名称を使っていますが、県立博物館では「洞穴」の名称で表示しているので、ここでも「洞穴」の名称を使わせていただきました。

 最後の写真は、博物館の第二展示室を入ったところにある洞穴を再現したものです。ここには、当時の石器なども展示していますので、興味のある方の来館をお待ちしております。また、博物館に来るのがむずかしい方は、本館のホームページの「バーチャルツアー」http://www.yamagata-museum.jp/guide/kids/virtual-tour/)から、展示物を見ることもできますので、ぜひご利用ください。


 

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