館長室だより(平成24年度)

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2013/01/04

1月の窓

Tweet ThisSend to Facebook | by y0000
 新年あけましておめでとうございます。山形県立博物館のホームページと館長室だよりを読んでくださっている方にとって、そして他の皆さまにとっても、今年が素晴しい一年となりますことをお祈りいたします。
 朝日新聞の元旦の『天声人語』に、「思えば暮れから新春への10日間ばかり、私たちは毎年、不思議な時空を通り抜ける」とありました。12月25日まで街はクリスマス一色ですが、大晦日の除夜の鐘で百八の煩悩を消し去り、新年には神社に初詣に行くことをこのように表現したものです。同じようなことを、俳人の長谷川櫂さんも以前雑誌に書いていました。キリスト教、仏教、神道の行事が、わずか1週間ほどの間に立て続けに続き、それぞれの神や仏にお祈りすることは、他の国の人々には節操がないと思われるかもしれないが、日本人には何の違和感もなく、むしろこれらの行事を楽しんでいる、と言うのです。そして、西行法師が伊勢神宮にお参りした時の歌を紹介していました。

   何事の おはしますをば しらねども
   かたじけなさに 涙こぼるる ……… 西行

 「この奥に何の神様がいらっしゃるのか知らないが、ともかくありがたくて涙がこぼれる」という意味だそうです。いろいろの神様や仏様に守っていただきたいという日本人の思いを代弁している、と長谷川さんは書いていました。

 すでに新年となりましたが、12月の博物館の様子を少し紹介します。
 12月には、「館長・学芸員講座」がありました。この講座は、本館の学芸員と館長による自分の専門分野を生かした個性的な講座で、毎年実施しています。今年度は、7月の前期に続いて、今回後期の3回が開催されました。私も「不思議の国のアリスとキャロルと数学と」という題で、初回を担当させていただきました。ご存知のとおり、「不思議の国のアリス」はイギリスのルイス・キャロルによる名作で、子ども向けの童話の印象がありますが、実は風刺や社会への批判なども多く盛り込まれていて、大人が読んでも興味深い物語なのです。また、あまり知られていませんが、キャロルは有名なオックスフォード大学の数学の教授でもあり、だじゃれも含めた言葉遊びも大好きな人でした。そのため、「不思議の国のアリス」の中にも、数学に関係のある話やいろんな言葉遊びが出ているので、そんなことを紹介しました。たとえば、小さくなったり大きくなったりして自分が誰だかわからなくなったアリスが、学校で習った算数や地理の内容を確かめる場面がありますが、そこでアリスは「4×5=12、4×6=13……」と言って、正しい答えを導くことができないことに自分でも気付きます。最初は、単にかけ算も忘れて正しい答えを言えなくなったものと思っていましたが、実は十八進法では「4×5=12となり、二十一進法では「4×6=13」と表記することになるのだそうです。キャロルはそこまで考えて書いていたのか思いながらこの作品を読んでみるのもおもしろいと思います。
 私の講座の後には、歴史の担当者による「初期仏教遺跡と仏足石」という講座と、教育の担当者による「寺子屋の学び」という講座がありましたが、いずれの講座にも、多くの方においでいただき、ありがとうございました。この講座は来年度も継続する予定ですので、よろしくお願いします。

 12月22日から、企画展「私たちのたからもの」が始まりました。これは、県立博物館と博物館友の会による共同企画展で、4回目となりました。友の会会員が所蔵する「たからもの」で普段人々の目に触れることの少ないものや、会員が関わる地域の「たからもの」、そして県立博物館の「たからもの」で展示する機会の少ないものなどを展示しています。
 通常の企画展は、第三展示室の半分のスペースを使って行いますが、企画展の内容によっては、第三展示室全体を使うこともあります。6月30日からの「豊穣と祈り」と10月13日からの「出羽国成立1300年」では、第三展示室全体を使って展示したため、常設の「近代山形くらしのうつりかわり」の展示品を一時収蔵庫に保管していました。今回の「私たちのたからもの」は半分だけの使用となったため、まずは、常設展示品の復元作業から始めました。最初の写真は、どこに何を展示していたかを確認しながら復元しているところで、次の写真は、約半年ぶりに復元された「近代山形くらしのうつりかわり」の展示品です。


 友の会の会員の皆さまからは、数々の貴重な資料をお借りして展示しておりますが、次の写真は押絵雛です。山形の呉服店に生まれた本田きよという人が、20歳でなくなるまでたくさんの押絵雛を作ったのだそうです。およそ120年も前に作られたものですが、このようにきれいな状態で保存されてきました。隣の女性は、製作者の本田きよを押絵にしたものです。


 次の写真は、博物館が所蔵するオオジャコガイです。貝殻は扇形をしており、大きいものは2m近くあり、重量も200kgを超えるそうです。写真ではどれくらいの大きさかわかりませんが、片方の貝の幅が55cm、長さが90cmほどの大きさです。マレーシア沖で採集され、本館に寄贈されたもので、私も今回初めて見ました。隣の写真は、今回の企画展の目玉とも言えるもので、ヤマガタダイカイギュウの化石の実物です。第一展示室の入り口に、ヤマガタダイカイギュウの化石の複製を展示していますが、今回は頭蓋骨や下顎骨などの実物を6年ぶりに展示しました。頭蓋骨の奥には、ヤマガタダイカイギュウのミニチュア模型も飾らせてもらいました。2人の小学生がこの化石を発見してから、今年の夏で35年になりますが、ほんとうにすごい発見をしてくれたものです。


 「わたしたちのたからもの」は2月17日までの開催となりますが、期間中には、博物館職員や友の会会員によるミニ解説会を行います。2月16日にはヤマガタダイカイギュウの解説会もありますが、詳細は、ホームページでご確認ください。

 毎月紹介している本館のお宝として、今月は「小国のそろばん玉石」を紹介します。海底火山の活動で流紋岩質マグマが噴き出してできたもので、1階の岩石コーナーと2階の第一展示室に展示しています。細かい石英の結晶が集まって球顆状をなす玉髄が結晶してそろばん玉の形を成すもので、小国町で産出したためこう呼ばれています。産地の小国町十四ヶ森地域は、昭和37年に山形県の天然記念物に指定されました。


 最後に、博物館前にできた雪だるまを紹介します。12月27日の午前、館長室の窓から、雪だるまを作っている親子が見えました。最近、雪だるまを作る子どももあまりみかけませんでしたが、雪はそれほど積もっていないのに、雪を集めて一生懸命作っていたので、外に出て話を聞いてみました。千葉県の松戸から来たとのことで、雪はあまり降ることがなく、楽しそうに作っている理由がわかりました。お母さんは酒田の出身で、実家に帰った後山形に一泊し、これから千葉に戻るとのことでした。ひとつ完成したところで記念写真を撮り、写真をプレゼントしました。この日は時間がなくて博物館を見てもらうことはできませんでしたが、今度来た時は見学してくれるものと期待しています。



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